低濃度アトロピン点眼治療とは

近視について

眼球はカメラのような構造をしています。目に入って来た光線が角膜(黒目)や水晶体(レンズ)を通して網膜(目の奥で光刺激を受け取る神経組織、カメラのフィルムに相当)で焦点を結び、その情報が視神経を通って脳へ伝わることにより物体が認識されます。近視とは眼軸長(眼球の前後方向の長さ)と角膜や水晶体の屈折力(光を集める力)のバランスが良くないために遠方から来た光線が網膜手前で焦点を結んでしまう状態です。近くのものを見るときはピントが合いますが、遠くの物体はピントが合わずぼやけて見えるようになります。近視が強い人は物を近づけてみることになります。

近視の原因で多いのは学童期に眼軸長が過度に伸びることによる軸性近視で眼鏡によって正常視力まで矯正可能な単純近視が多いですが、まれに病的近視に進行する例もあります。

近視発生に関わる要因

近視の発症には遺伝要因(生まれつきの素質)と環境要因の両方が関与すると考えられています。アジア人には近視が多く、両親とも近視でない子どもに比べて、片親が近視の場合は2倍、両親が近視の場合には約5倍の確率で子どもも近視になりやすいと言われています。環境要素としては近業(近くを長時間見ること)や屋外活動が少ないことの関与が示されています。日本だけでなくアジアの国々や米国でも小・中学生の近視が増えておりスマートフォン、ゲーム機などの普及が関係しているのではないかと言われていますが、はっきりした関係は不明です。

低濃度アトロピン点眼に
よる予防

アトロピン点眼は毛様体筋の調節を麻痺させて、瞳を大きく広げる目薬で小児の斜視や弱視の診断や治療に頻繁に使われているものです。アトロピン点眼には近視進行を抑制することが判っています。しかし1%アトロピン点眼(通常の濃度)は副作用として強い眩しさや近くを見たときぼやけて見えるため、長期に使用することは困難でした。シンガポールの研究で濃度を希釈した0.01%アトロピン点眼を1日1回2年間使用したところ、近視進行が抑制され、その効果は点眼を行わなかった場合に比べて平均50%の抑制、さらに点眼を中止した後も効果が持続することが示されました。低濃度アトロピンは副作用が少なく使いやすい目薬ですが人によって効果が異なります。

小児眼科学会HPより抜粋)

治療スケジュール

現在国内では承認薬ではないため自由診療となります。海外メーカーから輸入をして使用するためかなり高額(約3,000-4,000円 / 1本)となりますが、当院では自家調剤という方法を採用しました。当院の手術室(クリーンルーム)にて清潔環境下で薬剤を調合致します。これにより既存の薬剤を使うより比較的安価に自由診療を提供できるようになっております。

現在初回は保険診療にて 視力検査・屈折検査・眼軸長検査など行います。

0.01%アトロピンを1本お渡し、1カ月後副作用をチェックします。問題なければ次回から診察は3か月ごとになります。
目薬は感染防御の観点から1カ月経ちましたら余っていても廃棄していただき、目薬のみ取りに来ていただきます。
治療を進めるに辺り、より効果が高い0.025%アトロピンを使用することも可能ですが眩しさが強く出てしまうことがあるので医師と相談して決めさせていただきます。
また最低でも2年は継続可能な方が対象になります。

検査・診察代 2,000円
目薬代 500円/1本

※料金は税込みです。